【跡部】All′s fair in Love&War
第29章 はじまりのつづき(中編)
「この学校じゃ、執事やメイドが付いてても普通の話だろうが」
「そ、そんなのいないよ!あ、だからクラスメイトと話が合わない感じがするのか…!!」
一人で何かに納得した様子の松元は、ころころと表情を変える。その様子が面白くて、やはりおかしいほど可愛く見えて――
「おい松元、喜べ。この俺様が家まで送ってやろう」
「は!?い、いや自分で帰れる…」
「今日は確か、休み前だからと大量に課題が出ていた…持ち帰らなければならない教科書も多い、さぞ鞄は重いだろうな」
その言葉に少し青ざめた松元が、小さくお願いします、と返し、とうとう俺は耐えきれず笑う。
「荷物を纏めて校門まで来い、五分以内だ」
「は!?こっから教室まで五分はかかるんだけど!?」
「俺様もミカエルを待たせている、無理なら置いてく迄だ…精精急ぎな」
「な、何よー!自分が送るとか言い出したくせにっ!!」
捨て台詞を吐いて走り出す松元を見送り、五分以内は無理だろうな、と職員室に向かおうと考える。勿論、入部届を提出しに――そうすれば、もう、逃がさない。
俺たちのやり取りを怪訝な顔で眺めていたジローと、何故か俺に敵意むき出しの守河と目が合う。
「…お前達も乗って帰るか」
「いーや?邪魔なんてしないよ、なー守河」
「…そうね、帰りましょ、ジロちゃん」
上機嫌のジローと、何故かむくれている守河が連れ立って帰途に着くのを見送る。そうして、受け取った二人分の入部届を監督に提出し、わざとゆっくり校門へ向かう。
「あ、あとべっ…!結局あたしの方が早いんじゃないっ」
「よぉ、余程急いだみたいじゃねーの」
肩で息をしながら、俺を探していたらしい松元。その口から呼ばれる名前は、何故か擽ったく感じる。そのまま二人で車止めへ辿り着くと、ミカエルが少し驚いた様子でこちらを見ていた。