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【跡部】All′s fair in Love&War

第27章 Drive me blue




松元先輩、守河先輩のカバンを持って去っていく芥川さんを見送り。俺は部室の扉の前で、どう動いた物かを考えていた。

部室からはいろんな先輩の怒号が聞こえてくる。自分のせい、とは言いたくないが話が複雑になってしまっていることは想像がつくし、芥川さんが荷物を持って行ったと言うことはそういう事だろうし、あの人たちは松元先輩のこととなると本当に面倒だ。

それでも、自分が話に加わらなければ収拾がつかないであろう事も想像がつく――松元先輩の背に手を回した、その時。視界の端に部長の姿が映って、タイミングの悪さについ笑ってしまった事を思い出す。さぞ忌々しかったのだろう、苦い表情を浮かべていたし。


「あ、日吉…!!何処に行ってたんだよ、今大変な事になっててっ…」
「煩い、鳳。そんな事承知の上だ」


俺が帰ってきたことにすぐ気づき、駆け寄ってきた鳳をあしらって。先輩達の間をすり抜け、部長の前に真っ直ぐ立つ。


「なんだよ、日吉」
「どーしたん、いきなり?」


先輩達はまだ知らないらしい――わざと見下ろすように目を合わすと、部長の射抜くような視線が返ってくるけれど、今は全く怖くない。なんて言ったって俺はこの人よりも先に、彼女に思いの丈を伝えられたのだから――


「部長、俺は、松元先輩の事が好きですよ」


まるで二度目の告白のように、何処か緊張感をもって、そう言うと。ざわついていた部室は一気に静かになった。


「でも、俺は振られました」


部長の訝しげな視線が返ってくる。まさか抱き合っただけで、思いが通じ合ったんだと早合点したのか、と思うと、彼の意外な純朴さに笑える程だ。それだけ必死なのだ、と言われればそれも頷ける、けれど。


「振った俺の言うことを拒めない事くらい、想像つくでしょう?先輩って、そういう人ですよね」


部長の目の中の、怒りの色が濃くなる。煽るように笑う、俺も俺だな、と心の中で自嘲する。


「俺じゃだめ、なんですって。酷い振り方ですよね――でも、アンタならその意味、わかるでしょう」
「…俺にわかるかよ」


まるで拗ねたような口ぶりに、今度は堪えきれずに笑ってしまう。何故この人は、ことあの人の事となると、こんなに自信を無くすのだろう。いつもみたいに、鬱陶しい位自信満々でいればいいのに。

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