【跡部】All′s fair in Love&War
第20章 おわりのはじまり(前編)
「ご、ごめんね茉奈莉ちゃんっ…早めに出たつもりだったんだけどっ」
「ふふ、大丈夫だよ」
果たして今日も、その通りだった。私の方が早くつきすぎているだけなのに、律儀に謝る千花ちゃん。
中学からは氷帝に通うよう、両親に言われた時。私の頭に最初に過ぎったのは、他でもない千花ちゃんの事だった。離れ離れになるなんて、考えられない――そう思った私はまず、小学生らしからぬ分析を以て、千花ちゃんのお家のことから調べていった。
彼女は一人っ子で、持ち家で、共働きで…これなら大丈夫だ、という確信を得て、私は氷帝に進学する事、氷帝では外国語の授業が充実している事、そして千花ちゃんと離れたくない事、を伝える。
結果、全てはトントン拍子に進み。こうして二人揃って、入学式の朝を迎えている。
「うぅ、緊張する…もし茉奈莉ちゃんと離れ離れになっちゃったらどうしよう」
「10クラスあるって聞いてるから、一緒になる可能性の方が低いんでしょうね」
「だよ、ねぇ」
男女問わず好かれるタイプの彼女には、友人が多い。全く知らない場所に行けば、私だけに頼らざるを得ないだろう、なんて。同性の友人に向けることは異常に思える、どす黒い感情が渦巻く。
彼女が素直に私を慕ってくれる度、自分の汚い部分を思い知らされる。それでも消化する術も見当たらないまま、ここまで来てしまった――
学校につき、大教室で出席の手続きをすると、書類の束を渡される。封筒の中には二つ折りの紙が入っていて、これから一年間所属するクラスが書かれているという。
「いくわよ、千花ちゃんっ…」
「うん、茉奈莉ちゃん、せーーーのっ」
掛け声と共に、クラスが書かれた紙を見せ合う。私の紙には、1-Jの文字。千花ちゃんの紙には――
「1-Aと、Jだなんて…端と端じゃない!!」
「うぅ、茉奈莉ちゃあん…!!」
がっくりと、二人で肩を落とす。何も両端に分けなくても…10クラス先は遥か遠く、渡り廊下を越えて違う校舎だ。せめて部活は同じ物にしなければ――並々ならぬ決意を固めて、クラスの列に並ぶと、もう千花ちゃんの姿は見つけられなくなってしまった。