【跡部】All′s fair in Love&War
第19章 はじまりのおわり (後編)
「松元、届けは書けたかよ」
部活も終わり、皆が帰り支度を始める中。結局そのまま見学を続けてしまった私に、跡部が声をかける。黙って用紙を渡すと、跡部は内容を確かめるように一瞥した。
「これからは精精、背後に気をつける事だな」
「…わかってる、もう借りを増やすつもりは無いもん」
ずっと座っていたベンチから立ち上がる。何故こうなったのか、未だに考え直しても腑に落ちない。納得も行かない。けれど。
「決めたからには、宜しくお願いします」
あたしが頭を下げると、心底楽しそうな笑みを浮かべる跡部。そんな顔も出来るんだ、と少し驚くあたしをよそに、手を差し出す。
「こちらこそ、宜しく頼むぜ――松元 千花」
夕日に染まるその顔が何故か神々しく見えて、そんな自分が馬鹿馬鹿しく思えて、頭をふるり、と振るってから。手を出し、握り返す――そしてふと、何故初めから跡部は自分の名前を知っていたのだろう、と考える。同じクラスだから?そうだ、あたしはクラスメイトに鮮烈な印象を残してしまっているんだ――そこで、随分と長く手を繋いでいた事に気づき、ばっと振りほどく様にして離れた。
そんなあたしを、不敵な笑みを浮かべたままで、跡部が見つめていた――