【跡部】All′s fair in Love&War
第19章 はじまりのおわり (後編)
ぼーっと考えを巡らせている内に、今日も終礼のチャイムが鳴り響き、立ち上がる。
茉奈莉ちゃんと月曜日から美術部を見に行って、もう今日で五日目だ。体験入部も今日で最後、きっとこのまま入部することになるんだろうな、と思いながら遠いJ組までの道程を歩く。美術もそんなに得意じゃないし、興味もさしてないけれど、せめて放課後くらい気の合う人と過ごしたい――
J組の扉を開き、もう日課のように、一番手近に座っている男子生徒に声をかける。
「あの、守河 茉奈莉さんを呼んでほしいんですけど…」
いつもならすぐに茉奈莉ちゃんを呼んでくれる彼は、しかし今日はいつもとは違い、座ったまま口を開いた。
「あの、松元さん、だよね。守河さんから伝言を預かってるんだ」
思いもよらない言葉に口をぽかん、と開いているだろう私に、彼は更に思いもよらない言葉を続けた。
「テニスコートで待ってるね、だってさ」
結局律儀にテニスコートに来ている自分を恨めしく思いながら、茉奈莉ちゃんを探してとぼとぼと歩く。広い広いテニス部のエリアは何面もコートがあり、人の多さも半端じゃない。更にぐるり、と女子生徒達が周りを取り巻き、じっとフェンスの外から中を覗いている。確実に自分を睨むような視線がある事に、途中から気付いて逃げ出したくなる。
話が通っているのか、名前を言うとすんなりコートに入る事が出来たが。他の女子生徒は簡単には入れないようで、私の後に門前払いを食らった子には思い切り舌打ちをされた。
結局茉奈莉ちゃんを見つけたのは、一番奥のコートの中。隣にいるのは、さっき休み時間に話していた男子生徒だったか――ふわふわと金の髪をした、可愛い顔をした男の子。
随分と仲良くなったらしい様子にまた声をかけるのを戸惑っていると、他でもないその子がこちらに気付いたようで目が合う。そして茉奈莉ちゃんもその子から教えられたようで、漸くこちらに気付いた。二人が座るベンチの前に移動する。
「千花ちゃんっ!いらっしゃあい」
「おおー、オメェが松元かぁ!休み時間に何回か見た事あんなっ」
「ど、どーも…?あの、茉奈莉ちゃん、これは、」