【跡部】All′s fair in Love&War
第18章 はじまりのおわり (前編)
今日は授業が無かったから、そこで学校は終わり。一度家に戻って少し休んでから、身支度を整え出てきたのが、今だ。茉奈莉ちゃんのおばあちゃんが、入学のお祝いにご飯をご馳走してくれると言う。
茉奈莉ちゃんのおばあちゃんの料理は絶品で、いつもなら鼻歌混じりにスキップでもしていそうな所だが、今日は何とも足取りが重かった。いつも通り、茉奈莉ちゃんの家への最短ルートを辿る。
私達の住む街には、坂が多い。山を切り開いて作られたというこの街は、少し上るだけで絶景のポイントが沢山あるが、中には手入れされておらず鬱蒼と森のようになっていて、立ち入った事の無い場所も沢山あった――今日通っている此処は、公園のようになっており夕刻の今でも人通りがある。きつい上り坂を延々上り、広場を抜け、反対側に下りられる。ぐるり、と迂回する方が楽だが、時間的には圧倒的にこちらの方が早い。
頂上辺りに差し掛かった時、何人かの男の子の声が聞こえてきた。随分と楽しそうなやり取りに惹かれ、そちらに目をやる。自分と同い年くらいの男子たちが、小さなボールを巡ってやり取りをしている。蛍光色のあれは、テニスボール?
フェンスの向こう側など、気にしたこともなかった。立ち止まり、その中を覗く。コートの中には少し長い髪を後ろに束ねた気の強そうな男の子、彼ともう一人とのやり取りをキラキラとした瞳で見つめる金の髪をした男の子、オカッパ頭が特徴的な…男の子?はその隣で高く飛び跳ねている。そして、長髪の男の子と対峙しているらしい男の子、に、強く心を惹かれた。
意志の強そうな大きな目は、熱を持っているかのようにギラついている。走る度にさらり、と跳ねる髪は色素が薄いのか、ライトに当たると銀色のよう。対している長髪の彼には悪いが、圧倒的にそちらに分があるのは素人目でもわかった。スピードもパワーもテクニックも上回っているだろうし、何より、身のこなしが優雅で、戦っているようには見えない程だ――