第18章 はじまりのおわり (前編)

「いたいた、千花ちゃーんっ」


呼ばれた声に弾かれるように振り返る。茉奈莉ちゃんの姿を見つけ、待たせていた事を漸く思い出した。


「ご、ごめんね、茉奈莉ちゃんっ…！」
「いいのよ、おばあちゃまに言われて迎えに来たの！…あれ、テニス？」


そうみたい、と答え。もう一度コートを見やる。騒々しいやり取りはまだまだ続きそうだ。


「千花ちゃん、テニスに興味なんてあったの？」
「え？あ、ううん…そんな訳じゃ、無いんだけど」


改めて理由を問われると、立ち止まったのは何故だったか自分でも分からなくなった。行こう、と茉奈莉ちゃんを急かし、歩き出す。相変わらず聞こえてくる声に、ほんの少しだけ、後ろ髪引かれる思いで。