第8章 彼の見えざる手
ハムラビ法典―――
目には目を、歯には歯を。
―――マフィアにはマフィアを。
連中が政治家と繋がっていたことも、その政治家がマフィアと関係を持っていたことも、凡て太宰と薄雪の云った通りであり、調べれば直ぐに判った。
そして太宰が作戦名を言い渡すと、薄雪は躊躇いなく『実家』に協力してもらうと申し出た。
しかし、非合法組織が現れるとなれば一般人に被害が及ぶことだけは何としても避けなければならないこと。故に、国木田が市警と連携して人払いを行っていたのだ。
にも拘らずこの少年が此処に居て、且つ、太宰がその様子を窺っていたとするならば―――
「太宰、俺は先に探偵社に戻ってるぞ」
「はーい。私は薄雪と食事してから今日は帰るよ」
「判った」
この少年は太宰に仕組まれて此処に居ることになる。
理由など詳しく判らずとも、間違いなく薄雪絡みだ。
国木田は瞬時にその事を察すると太宰にこの場を任せて去ることにした。
○○がすがるような目で国木田を追うがその意が国木田に届くことはなかった――。
太宰は手を離すと、向こうから歩いてくる薄雪に気付き、いつもの笑顔を浮かべる。
「薄雪、有難う」
「いえ」
そう云うと太宰に1本、買ってきた飲み物を渡し、○○にも差し出す。
「え………」
「好みが分からなかったので温かいお茶ですが」
ニコッと笑って渡されたお茶を受け取った○○。
その様子を呆れ顔で太宰が観ている。
「帰るよ薄雪」
「あ、はい……って兄様?探偵社は其方ではありませんよ!?」
「帰るって云ってるでしょ。序でに食事していこう」
「!」
探偵社?
薄雪の手を取り、歩き出そうとした太宰に声を掛けるべく○○は口を開けた。
「ちっ……ちょっと待っ!」
「?」
1歩踏み出したところで留まり、○○の方を向く薄雪。
「………何だい?急に」
当然、太宰はあからさまに不機嫌だ。
「探偵社って………薄雪さん……マフィア……え?」
○○は混乱していた。