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【文スト】永久に枯れない花の色は

第8章 彼の見えざる手


「何故、私がその様な大金を持ち歩いているか一瞬でも考えました?」

「はァ?」


男達は意味不明と云わんばかりに疑問符を口にする。


「では、質問を変えましょう」


薄雪はニコッと笑う。
そして、直ぐに表情を消して、云った。


「私が何者か―――。一瞬でも考えました?」


静かに告げた言葉と同時に車の停車音が辺りに響いた。
音は薄雪達の背後から。
言い換えれば男達の正面から聴こえた。


「ッ……!?」


そして、その方向から歩いてきたのは□□に所属していると自慢気に話していた男達と同じ格好をした男が3人と、黒を基調とした小洒落た格好の男が1人―――。


「4分27秒とは、流石、中也兄様」

「彼奴と較べんじゃねーよ」


小洒落た格好の男こと、中原中也は薄雪の隣に来るとケッと悪態付きながら云った。

その姿を見て、男達が一斉に○○と同じ顔付きになった。

「……。」

中也は男達を一瞥すると、薄雪の方を見て、話し出す。

「で?何の用だよ」

「私の小遣いでは飽きたらず大金を寄越すように迫られまして」


「へぇ―………」

中也が獰猛な笑みを浮かべて云った。


男達がガタガタと震え出す。


「俺に因縁吹っ掛けただけじゃ飽きたらず薄雪にまでちょっかい掛けたのか手前等」

「ヒィ……!」


○○は混乱していた。

ナイフを向けられて脅された。
睨み付けられて血の気が引いた。
今まで感じたことの無い恐怖に立ってすら居られなくなった―――。


なのに、何故だろうか。


一瞬で立場が逆転してしまったのだ。


何故だ?何が起こってる?


力が入らずに座り込んだまま、唯唯、目の前の出来事を呆然と眺める。


「おや。中也兄様のお知り合いでしたか」

「ああ、1週間くらい前だったか。人が折角の休日に気分よく街で買い物してたら金寄越せって云って来やがったんだよ」

「あぁ……成る程。―――そう云うことでしたか」


よりによってマフィアの幹部に金をせしめるとは。


中也の事だ。返り討ちにして、序でに嫌がらせで金を寄越すように云ったのだろう。
その金額も半端な金額を要求しているわけが、無い。

だから大金が必要だったのだろう。


今の話で、薄雪はこの事件の根本まで理解できたのだった。
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