第8章 彼の見えざる手
翌日―――
僕は軽やかな足取りで学校へと向かった。
何時もなら勉強面倒だとか、行きたくないとかしか思わない何の変鉄も無い通学路も今日はキラキラと輝いている。
こんなに登校が楽しいと思ったのは産まれて初めてだった。
僕はすれ違う学友達に挨拶をしながら教室へと向かった。
「おはよー」
ガラッと教室の扉を開けて自分の席に着くと何時も話す友人達が挨拶を返してくれる。
「おっ!○○が早いなんて珍しいじゃん」
「ははーん。さては何か良いことがあったな?」
僕はそんな直ぐに判るほどの顔をしていたのだろうか。
「「バレバレだよ」」
お前、顔や態度に出やすいからなーと笑いながら云われて少し落ち込んだ。
浮かれているのが隠せないなんて子供っぽいよな……。
「で?どうしたんだよ」
「あ。真逆、この間云ってた一目惚れの彼女と付き合えたのか!?」
「!?」
鋭い!
「そっ…そんなわけねーだろっ!」
そこまでいってたらどんなに良いか………!!
まあ『彼女』の事には間違いない。
「じゃあ何だよ」
つまんねーのとぼやきながら訊いてくる。
「いやっ、彼女の事ってのは合ってるんだけどさ!」
「おっ!なになに?進展あったのか?」
突然、2人の態度が変わり興味を示した。
「薄雪さん……あ、彼女は白沢薄雪さんって名前だったんだけど、何と谷崎さんの知り合いだったんだ!」
「「おー!」」
知り合いの知り合いだったのか!良かったじゃん!などと、昨日の僕と同じことを口々に述べた。
矢っ張り、僕はついていた!と再確認できた。
そんなときだ。
「おはようございます」
「!」
待ち望んでいた人物がやって来たのだ。
僕は直ぐに谷崎さんの元へ向かった。
お決まりの挨拶を早々に済ませて。
彼女の年齢
学生かどうか
今何をしているのか
趣味はどんなのか
どんな人物か―――。
薄雪さんについて訊きたいことを一気に質問したのだ。
谷崎さんは一瞬、キョトンとして。
でも直ぐに笑顔で僕の質問に答えてくれた。
「危険な目に遭っても冷静でいて、私達の事を助けてくれる素敵な方ですわ」
想像通りの、理想の女性だということがハッキリと判り、僕のこの気持ちは一層高まるばかりだった。