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【文スト】永久に枯れない花の色は

第8章 彼の見えざる手


―――

武装探偵社入口。

「では宜しくお願いします」

一礼したスーツ姿の男が出ていくのと
薄雪達が帰社したタイミングが重なった。

その男性に薄雪達も頭を下げて、社に入る。


「只今戻りました」

「早かったな」


その男性を対応していただろう国木田が書類に目を通しながら2人に反応した。


「依頼人の方ですか?」

「ああ……また『例の件』だ」

薄雪が問うと国木田が溜め息を着いた。


ここ数日、同じ様な内容の依頼が立て続けに探偵社に舞い込んでいるのだ。

「此れだけの被害者が出ているというのに市警は一体、何をしていますの?」

いつの間にかお茶を淹れに行っていたナオミがそれを運びながら口を挟む。



依頼人は凡てその被害者だった。
手口は大したことではない。通行人に対する只の云い掛り。『ぶつかって怪我した』とか『通行料』とか云って金をせしめる手口だ。

問題はここから。
その金額が持ち歩くわけ無い程の大金であること。
逃げ帰っても居場所を特定されて必ず請求がくること。
支払わなければ支払うまで執拗に迫られること。

そして、被害届を出しても被害が収まらないこと、だ。


「谷崎と敦に見回りさせているが奴等も『獲物』を見定める目はあるのか、中々見付からない」


出されたお茶を飲みながら国木田が溜め息混じりで云った。

「ニュースにも取り上げられているところを観たことありませんものね。あ!もしかしたら自作自演なのでは?」

「有り得ませんね」
「有り得ないねぇ」

「「!」」

ナオミの推理を薄雪と、もう1つの。
重なった声が否定した。

その声の主は突然現れたかと思えば
後ろから薄雪を抱き締める。
いや、どちらかと云えば………

「治兄様、具合が善くないなら無理しない方が」

「薄雪が看病してくれないからでしょ」

薄雪の頭に自身の顎をのせてのし掛かっているような体勢だった。


「で?何故、そうもハッキリと否定できるんだ?」

この2人の格好など気にもせず。
国木田は目の前の疑問だけに集中する。


「共通点が無いから」
「共通点が有りません」


2人は再びハッキリと答えた。
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