第7章 戦争の残火
乱歩が冒頭で云っていた。
「本物」だと。
太宰が先刻、云っていた。
「私まで利用された」と。
太宰の知恵を借りたのではないかという疑念の否定だったのだ。
自らの力のみで自分以外の非戦闘員である事務員を守った所業―――。
『ナオミさんは無事ですよ』
見えないところに居る人間さえも守り抜く手腕
「社長」
国木田は目を開けた。
「私は白沢に不安さえ覚えます」
「……。」
福沢は黙って聴いている。
「マフィアの指揮権を持つ探偵社員など社の意に反する」
乱歩も太宰も黙ったままだ。
「しかし……彼女の「信義」も「実力」も本物だった」
その言葉を聞いて、太宰と乱歩がフッと笑った。
「入社試験は―――間違いなく合格です」