第7章 戦争の残火
社長室に呼ばれた3人。
「乱歩」
「本物だね。太宰そっくり」
「うふふ。可愛い『妹だった』から」
「うえー。だからあんなに歪んでんの?薄雪可哀想に」
2人のやり取りをポカンとしながら見ている国木田。
「国木田、如何だった」
突如、話題を振られてハッとする。
「如何、というのは」
「薄雪の事だ」
「!」
国木田に混乱を与えている人物の名を出され、困惑している。
「今回の一件、手際が良いと云えます………否、良過ぎる程に」
「真逆、私まで利用されるなんてねー」
ヘラッと太宰が笑う。
「貴様は自ら手を貸したんじゃなかったのか」
「違うよ?私が態々、自ら嫌いな人間に会いに行くわけないでしょ」
「……。」
確かに。
そう思えるほどに国木田は太宰と共に行動している。
「後始末を頼む為に中也を誘い出したまでは良かったけど、恐らく相手の規模と実力を把握するまでの時間が無かった筈だ。そこで保険として芥川君をも誘き寄せることにしたんだろう。そして、その芥川君の隙を作れる有力な人物と云えば敦君だから敦君も強制参加。しかし、そうなると危害が及ぶ可能性が高くなるから矢張り私を呼ぶ必要が出てくる」
「簡単に云うが、単純な話じゃ無いだろう?」
「勿論そうさ。あの組織を裏で手引きしない限り不可能だよ」
「!」
裏で手引き………。
「出来過ぎてたでしょ?捕まって早々に私に繋がれたことも、都合良く水を使った人質交渉も、相手が掌を返してマフィアと取引しようとしたことも、地の利を得た戦況も――――全部薄雪が入れ知恵して仕組んだこと。詰まり今回の一件、あの組織は薄雪の掌の上で踊らされていただけに過ぎない」
「!」
国木田は言葉を発することが出来なかった。
「故に―――今から先の戦いに必ず必要になる戦力だ」
此処まで聞いて。
国木田は理解したのだ。
乱歩と自分が呼ばれた理由を。
国木田は目を閉じた―――。