第7章 戦争の残火
「如何かされたんです?」
「何でも無いよ」
そう云いながらお茶を啜る太宰。
此処で国木田がハッとした。
薄雪がポートマフィアの次席たる所以は解った。
しかし、解決はしていないのだ。
強いて云えば不安が増しただけ。
「何時でもマフィア側に寝返ることが出来る」と云うことを知ってしまったから―――。
そんなことを考えていると
ガチャッ
「「「「!」」」」
扉が開き、一人の男性が入ってくる。
「社長……」
福沢だった。
「ご苦労だった、太宰」
「ふふっ」
太宰に労いの言葉を掛ける。
そして直ぐに薄雪の方を見て、云った。
「薄雪も」
「恐縮です」
一礼をする薄雪と社長を交互に見て、何事かと云う顔で福沢を注目した。
「社長。一体、何が」
代表して国木田が問う。
「マフィアとの相討ちを目論む連中の摘発に逸早く気付き、対応することが出来たからな。事務員も此れで当面は安全だろう」
「「「!?」」」
「なっ……!」
最初から解っていた、だと?
「彼等は、先日『事務員』を餌に敵対組織を釣る手段を取って私達の混乱を誘発させることに成功したことを知っているからね」
先手を打たせてもらったのさー、と太宰は一人だけお茶を啜りながら暢気な様子で話す。
「!?」
そう話す太宰の言葉に付け加えるように薄雪は口を開いた。
「私だけを付けているなら構いませんが、そうもいかないご様子だったので」
「!」
谷崎がバッとナオミを見る。
「もしかして……」
敦の中で解決していなかった疑問が再び浮上した。
「マフィアがあの場に居たのは……」
その言葉に反応し、
「中也兄様は置いておいて、敦さんと芥川くんの接触はご推察の通り。済みませんが仕組ませて頂きました」
「「「!」」」
アッサリと云った。
「にしても何で中也なんて呼んだの」
ムスッとして太宰が訊ねる。
「狙われていることを御伝えした際に、治兄様に対して大変ご立腹な様子でしたから。どうせ治兄様がこの間、何か怒らせることをしたんだなと思いまして」
「置いて帰っただけなのに小さいねぇ」
「ふふっ。御蔭様で苦労せず兄様を山車に呼び出せました」