第7章 戦争の残火
男達の背後で、何かが蠢く。
其れに気付き、男達は顔色を変えた。
「生憎、私はポートマフィアの首領次席」
薄雪は苦笑しながら続ける。
「故に、中也兄様は私に手を下せないのですよ」
「「「!?」」」
そう云った瞬間に、蠢いていた何かが男たちに襲い掛かった。
ポートマフィア首領次席――白沢薄雪
能力名―――『永久に枯れない花の色は』
襲い掛かった何か―――
意思を持ったように動く水の固まりは、男達の上半身『だけ』に纏わりついた。
「どうぞ力尽きるまで溺れていて下さい」
「云うのが遅ェよ。あれじゃ誰にも聞こえてねーぜ」
「ふふっ。そうかもしれませんね」
其れを見届けて中也が薄雪を離した。
「銀ちゃん達にもその権限を行使して命令している。だからナオミちゃんは無事だ」
「ナオミ…」
谷崎が安堵する。
「ポートマフィアの2位が探偵社に居るだと……!?」
打って変わって国木田の顔は、青い。
「まあ、その話は戻ってからしよう」
太宰がニッコリ笑って云うと、薄雪の名を呼んだ。
それに気づいて、薄雪は再び太宰達に歩み寄る。
「此れ、解いて」
太宰が短く、そう云うと「水」が全員のロープを切断した。
パラリと落ちるロープを見て、敦が薄雪を見る。
「薄雪さんも異能力者だったんですね」
「はい。私の異能…『永久に枯れない花の色は』は主として水を操る事が可能です」
「水…それで無事だッたンですね」
谷崎の言葉にコクッと頷く。
「敵の油断を誘うために天井まで水位を満たす必要があったのでナオミさんにも苦しい思いをさせてしまいましたが、無事ですよ」
薄雪の一言で谷崎は長い息を吐いた。
「却説と。帰ろうか」
「はい」
太宰が手招きする。
其れに応じて薄雪が隣に来た。
「じゃあ後始末宜しくー」
「ちょっと待て!何でも面倒だけ押し付けてんじゃ無ェよ!」
「薄雪」
「『後始末宜しくお願いします中也兄様』」
「卑怯だろうがあ!!」
再び漫才……
基、軽い感じの会話を行うマフィアと元マフィア組。