第7章 戦争の残火
――それもそうだ。太宰はさておき。
裏切り者には『死』しか無い筈だが何故、白沢は生きている?
マフィア達と遭遇していたあの密室で殺されていても可笑しくない筈だ。
国木田の中に益々、嫌な予感が込み上げてくる。
そして、その予感は的中する。
「只の構成員ならそうでしょうが私はそうもいかないようです」
「そんな理由が存在すると思えん!」
男がそう啖呵を切った瞬間に、後ろの連中も構えた。
はぁ。
詰まらなそうにまたもや息を吐く薄雪。
そして、
「この塵、片して下さい―――中也兄様」
中也を拘束していたロープだけ、切れた。
「チッ!面倒事だけ俺に押し付けやがって誰に似たんだか!」
中也が文句を吐きながらも敵に向かっていく。
その光景を愉しそうにみている薄雪。
「―――太宰。説明しろ」
国木田が低い声で云う。
「え?何を?」
「何故、マフィアの幹部が白沢の云うことに素直に応じている!」
「ああ」
薄雪同様、中也の方に視線をやっていた太宰が漸く国木田の方を見る。
「薄雪は――」
太宰が云い掛けたのと
「ちょっ……!一寸待ってくれ!俺達よりも、裏切り者がそばに居るんだから其方の始末が先じゃないのか!?」
男の大声が重なった。
探偵社員と芥川を含む全員の注目が其方にいく。
既に結構な人数が減っているが相手はたった2人。
そう思ったのか。
ズガガガッ!
動きを止めて叫んだ男に注目した隙を狙って他の者が発砲した。
狙いは、薄雪の方だ。
「「「!?」」」
「チッ。話し始めたかと思えば攻撃を再開しやがって」
「ふふふ。元々、そういう型の連中じゃありませんか」
片腕で薄雪を庇うように抱え、もう片方の手で弾丸を落とす。
何事も無いように話す2人と、
当たり前のように薄雪を守る中也に驚く、太宰以外。
そんなことに気付いていないのか。
或いは御構い無しなのか。
「先刻も申し上げた通り、私は武装探偵社の事務員をしているポートマフィアの人間です。貴方がたが云う通り、只の構成員なら善かったのですが」
中也の腕の中に居たまま、薄雪が口を開いた。