第7章 戦争の残火
「……フン。まあ只の事務員なら分からねーかもな。もう一人の事務員はもうすぐ俺達の捕虜として……」
ザザッ
男がそういった瞬間に通信が入ったのか。
男が耳に手をやり、音に集中する。
「交渉は上手くいっ――………」
『ズガガガ…!』
「!?」
耳に届いたのは大音量の銃撃音。
男が思わず驚く。
「おい!?如何した!?」
「「「?」」」
そんな男を不思議そうに観ている敦たち。
クスクスクス……
「!?」
突然、薄雪が笑い出した。
「だから先刻から云っているではありませんか。『貴方が優越感に浸りながら話す理由が判りかねます』と」
「なっ………」
男が思わず後ずさる。
「私には貴方達の交渉が失敗に終わることなど分かっていましたから」
「「「!」」」
太宰と中也以外の人間が、驚きの表情を浮かべた。
「何故だ……」
男が絞り出すように声を発する。
薄雪はそれを愉しそうに聴いて、答えた。
「理由なんて単純です」
「それを訊いているんだ!」
男が銃を構えた。
その行動に呆れたのか。
薄雪は再び溜め息をつく。
「貴方達が組織の中で生きる人間として従うべき者というのは、国の首領でもなければ自分の好い人でもない。違いますか?」
「………。」
否定しないということは肯定なのだろう。
薄雪は気にせずに続ける。
「そう。如何なる非合法組織でも『長の意が凡て』―――此れは絶対の規則」
男達や太宰達は唯、薄雪の話を聴いているだけのようだが。
国木田だけは違った。
嫌な予感しか、しないのだ。
「そういえば自己紹介が未だでしたね」
突然。
何を思い出したのかと突っ込まれても仕方無いほどの内容を薄雪が口に出す。
そして。
「武装探偵社事務員改めまして、ポートマフィアの白沢薄雪と申します」
「馬鹿な!組織の裏切りや寝返りなんか出来る筈がない!嘘を付くな!」
「失礼ですね。嘘ではありませんよ」
「……。」
男の発言に中也が顔をしかめる。