第7章 戦争の残火
「仲間がお前らのせいで死んだのに随分な反応だな」
「俺達マフィアにとって死なんて常に隣にいる―――早いか、遅いかだけだ」
「ほう……では貴様等は?」
「訊かれてるよ、国木田君」
「先刻まで喋ってたのは貴様だろうが!」
「だから痛いってば!」
「む。すまん……」
完全にこの男で遊んでやがるな。
中也は呆れながら2人を見ている。
「私達は仲間を見捨てたりなどしないよ」
「ハッ。どの口が云ってるんだ?」
男達が笑い飛ばす。
「貴様達が交渉に応じなかったから彼女達は死んだ」
その男の言葉に
「あはははは」
「ははっ」
「「「!?」」」
太宰と中也が笑いだしたのだ。
対峙している男達は勿論だが。
敦も。
国木田も。
谷崎も。
芥川でさえ。
ポカンして2人を見ている。
「お目出度い奴だな、おい」
「本当だねぇ」
ケラケラと笑っている2人に段々怒りが込み上げてくる。
「………何が可笑しい」
「見せ給えよ」
「は?」
「4人の死体を見せ給え」
太宰がニッコリ笑って、云った。
何を意図しているか全く判らないが、一理あると思ったのだろう。
男は数人に指示を出した。
「それを見て如何すんだ?」
「見てから考えるよ――――尤も」
ゾワッ
「!?」
男が、何かにビクッと反応する。
「「死体なんてあるわけないけどね(な)」」
「「「!」」」
太宰と中也の声が重なる。
4人が、男達が。
その言葉に驚いている時だった。
指示されて離席していた男の1人が、慌てて戻ってきた。
「た……っ!大変です…ボス!!」
「な……何だ……慌てて。死体はどうした!」
「それがっ……死体がっ……1つもっ……在りません!!」
「何ぃ!?」
伝令の報告に大声で驚くボスと呼ばれた男。
そして、背後から声を掛けられた。
「お探しものですか?」
「!?」
男が、飛び退ける。
「あ……」
男の後ろから姿を現したのは、先程まで映像に映っていた女性の1人。
――――白沢薄雪だった。