第7章 戦争の残火
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「くそっ!開かない!」
入ってきた扉を叩き、樋口が嘆く。
「薄雪さん、如何しましょう!」
「落ち着いて下さい」
ナオミの頭を撫でてやる薄雪。
連れてこられた部屋はコンクリートでかっちりと固められた部屋だった。
天井の隅に、カメラが一台取り付けてある。
入室した際にみた扉の厚さは、見掛けない程の厚みがある上に金属製。
そして、入ってきた扉の正面の壁面の下方にある2、30糎四方の、等間隔に開いた穴。
―――どう見ても特殊な部屋であるとしか思えない。
「とは云ったものの、状況はあまり宜しくありませんね」
「くっ!」
薄雪が云うと樋口が懐から銃を取り出した。
「無駄ですよ。発砲したところで跳弾で怪我する確率が上がるだけです」
「っ!」
樋口は反論しようとしたが、止めて懐に銃を仕舞った。
「此方側にドアノブが無い上、あの壁面の下側にある穴。入ってくる際に確認した扉の厚さを考慮すると良くないことが起こりそうですね」
「そんなっ…!」
はぁ、と溜め息を着く薄雪にしがみつくナオミ。
その光景を見て、
「………貴女なら如何にかなるのでは?」
「銀!?」
銀が口を開いた。
あまりの驚きに樋口の声が裏返る。
話し掛けられた薄雪は口元に手をやり、うーんと考える仕草を取る。
「如何にかなる範疇なら良いですけどね」
苦笑しながら返事をした。
その時だった。
ゴゴゴゴゴ………
「「「!?」」」
薄雪が先ほど指摘した穴から聞き慣れない音が響いてきたのだ。
そして
「きゃあ!!」
「み……水!?」
その穴からすごい勢いで水が流れ込んできたのだった。
「成る程。河川の傍にある施設……水を使った何等かの施設だったのですね」
「落ち着いて分析してる場合ですか?!」
薄雪がフム、と納得していると樋口が凄い勢いでツッコミを入れる。
「此れであの分厚い扉の理由が判りました。この部屋は水で埋まります」
「「!?」」
「そして、既にこの水位であることを考慮すると保って後、3、4分といったところでしょうか」
と慌てた様子なく話している薄雪の胸元まで、
既に水があがってきていたのだった―――。