第7章 戦争の残火
「じゃあ、あの携帯電話は矢っ張り」
「……。」
「?」
初めて芥川と対峙したときに連れていた女性のものだと思っていたが。
「銀ちゃんのだったのかな」
「!」
太宰の言葉に芥川がピクッと反応したのが敦には判った。
銀ちゃん……芥川の妹さんだっけ。
とある一件で知った事実。
敦が知らないと配慮したのか、太宰達がそれ以上詳しく云わなかったため敦も言葉には出さなかった。
「……完全に仕組まれてんな」
「だね。この調子じゃまだ増えるかも―――」
「ナオミ!くそっ!ナオミは無事なんだろうな!?」
「落ち着け、谷崎!」
太宰と中也が云った瞬間に聞き覚えのある声が空間に響き渡った。
「太宰!敦……それにマフィアだと!?」
「やあ国木田君。駆け付けるのが早いねー流石『理想』の鬼だ」
「……態とか?態と云ってるのか?」
米神に青筋を浮かべて太宰に返す。
そんなやり取りをしながらも、2人を連行してきた男達は2人を背中合わせに結び直し、足をも縛り上げる。
「うぉっ!」
そして、腕を太宰の右腕に引っ付けて拘束した。
「何なんだ!一体!」
「私に繋ぐことで異能力を封じたんだよ」
「「!?」」
中也以外の全員が、反応した。
此れで役者が揃ったのか。
男達がゾロゾロと出てきて、太宰たちの前に立ちはだかった。
「ようこそ。探偵社、及びマフィアの諸君」
「ケッ。何がようこそだ。さっさと用件を云えよ」
中也が男達に云い放つ。
「おっと。やはり日本のマフィアはせっかちだな」
そういう男達は異国の人間ばかりだ。
―――恐らく、『組合』の残党か、それに類する者だろう。
「まあ、用件は実にシンプルだ」
そう云うと男達が一斉にニヤニヤし始める。
「探偵社とマフィアで殺し合いをしてもらいたい」
「「………。」」
想像がついていたのか。
誰もが大きな反応をせずに男達の方を見ている。
「断ると云ったら?」
国木田が問うと男が懐から何かを取り出した。
何かの操作機のようだ。
その内の1つの釦を押す。
太宰達の前に巨大なスクリーンが現れた。
「此処は水力を使った元実験施設でね」
ピッと、また釦を押す。
「!?」
「ナオミ!」
各々、探していた人物が映し出されたのだった。