第7章 戦争の残火
翌日の探偵事務所――――
「国木田さん!太宰さんが―……」
「あんな怠け者など俺は知らん!この書類を3分27秒後までに仕上げて12分後のタイムセールに行く予定だ。邪魔するな敦」
バリバリと仕事を行っている国木田の邪魔など出来る筈もなく、敦は自力で解決すべく探偵社を後にした。
『嗚呼!私を呼ぶ声が聴こえる……!』
『ちょっ!?太宰さんんんん!?』
ドポンッ……!
何時ものことと云えば何時ものことだが。
依頼を受けるべく歩いているときに途中に在った河に飛び込んでいったのだった。
「何処まで流されたのかな………」
はあー。と大きく溜め息を着いて先程の河の川下の方へと歩き出したのだった。
―――
川下の方へ歩いていくと脇に大きなトンネルのようなものが現れた。
河が其方にも引かれているということは河川の水を利用した何かの施設に繋がっているのか。
此処ならサボるのに丁度良さそうだな………
敦はその薄暗いトンネルの中に入っていったのだ。
「太宰さんー!いませんかー?」
聴こえるのは自分の声の反響音と水の音だけ。
此処には来てないのかな。
大分奥まで歩いてきた積もりが何処にも繋がること無く、唯、続いているトンネル。
そろそろ引き返そう。
そう思った時にカツンッと何かが足に触れた。
「ん?何か蹴った……?」
猫科のお蔭か。
薄暗い中でも不自由無く行動できている事に感謝する…等と云ったことは今さらすることも無く、蹴飛ばした何かを目を凝らして探した。
「ん?これ……携帯電話……?」
見付けた四角い小さなものを拾い上げ、物を確認する。
「!電源が生きてる」
拾い上げた拍子に操作釦を押してしまったのだろう。
パッと着いた明かりに、目を細目ながら驚いたその時だった。
ゾワッ
「!?」
敦が思わず跳び反る。
敦が居た場所にガッ!と音を立てて、何かが食い込んだ。
「避けたか。だが、次は無い」
何時の間にか現れた人の気配。
否、それよりも―――
「その声……芥川!?」
「!人虎か……?」
敦は目を凝らして、相手を見た。
突如、自分に攻撃を仕掛けてきたのは間違いなくポートマフィアの構成員―――芥川龍之介だった。