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【文スト】永久に枯れない花の色は

第7章 戦争の残火


武装探偵社とポートマフィアの共闘すえ、
巨大な敵であった『組合』に勝利した。

未だ戦中の被害の傷は癒えきれていないものの、
落ち着きを取り戻しつつある日常―――。


新しく入社した泉鏡花の歓迎会。
どこもかしこも賑やかな探偵社内に於いて敦はふと気付いた。


「……あれ?そう云えば……太宰さんと薄雪さんは?」



―――


太宰と薄雪は並んで座っている。
見上げる先には1枚の大きな絵画。


その隣の椅子に、男性が一人やって来て、座った。

「変な絵だねぇ」

その男性に突然、太宰が話しかけた。

「絵画を理解するには齢の助けが要る」

「この位なら私にも描けそうだ」


「えっ……」

「君は凡そ何でも熟すが……」

太宰の発言に薄雪が驚き、同じ様な反応で男性が返す。

「君が幹部執務室の壁に描いた自画像を覚えているかね?」

「あぁ。首領の処のエリスちゃんが敵の呪い異能と勘違いして大騒ぎ」


3人揃ってクスクスと笑っている。

「広津さん。例の件、助かったよ」

太宰が話を変えた。

「あの程度で善かったのかね?私は白鯨潜入作戦を樋口君に漏らしただけだが」

「彼女が知れば芥川くんに伝わる。芥川君が知れば必ず単身 乗り込んで来る。予想通りだ」

薄雪は2人の会話が始まった時点で離席し、他の絵画を鑑賞すべく歩き出した。


「………。」


絵画を観ながら気付く、何か。


それに気付かないようにして鑑賞を続ける。



「薄雪、帰るよ」

「あ、はい」


話が終わったのか太宰が薄雪を呼び戻す。


「元気そうだな薄雪君も」

「広津おじ様もお元気そうで何よりです」

ニコッと笑って挨拶をし、直ぐに太宰の方を向く。

「あら、治兄様。御髪が乱れてますよ」

「ん?」

そう云って鏡を差し出す薄雪。



「あらら、本当だ。もう少し早く教えてくれれば善かったのに」

笑いながら髪を整える太宰をニコニコしながら見ている薄雪。


「……。」

突然どうしたのか。
そう思って2人を見ていると、ふと違和感を覚える。


人の気配がするのに、姿が見えない――。


そういうことか。


広津が今のやり取りの意味に気付いた後、
直ぐに2人は笑顔で去ってしまったのだった。
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