第5章 真実
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通報したのは良いものの。
第一発見者として、色々訊かれて帰宅する頃には辺りは真っ暗だった。
「!」
誰も居ない筈の自室に灯りが点っている事に気付く薄雪。
薄雪は扉の前で深呼吸をして、
「只今戻りました」
部屋に入っていった。
「おかえり」
本来なら有る筈も無い返事。
酒を飲みながら何かの資料らしいものを見ている太宰だった―――判っていたが。
そんな太宰の横にストンと座る薄雪。
「治兄様、訊きたいことがあります」
「何だい?急に」
「………。」
此処で薄雪は困ったのだ。
話を切り出した迄は善かった。
訊きたいことは山のようにあるのだから。
問題は、その訊きたいことが太宰の勘に障らないかどうか、だ。
元々、色々と詮索される事が嫌いな人だと云うことを薄雪は知っていた。
だから今まで太宰と話すときは言葉を選んで会話していたのだ。
全ては、嫌われたく無いが故に―――。
急に勢いが失われ、黙り込んだ薄雪に太宰が溜め息を着く。
「忙がしいのだけど」
「あ……御免なさい……今度で良いです……」
「……。」
予想通りの行動だったのだろう。
グイッと薄雪の腕を引っ張って自分の懐に閉じ込める。
「治兄様……苦しいです……」
「何が訊きたいの」
「今度で良いって云ってるじゃありませんか」
「薄雪は私に思ったことを云わないね、昔から」
「!」
太宰の言葉にビクッと反応する。
「中り、か。理由は?」
「………云えません」
「そう。じゃあ良いや」
「!?」
トサッ
その場に押し倒される薄雪。
両手を頭上で拘束され、覆い被さる太宰。
「云うまで止めないから」
「!?」
薄雪の衣服の釦に手を掛けて、黒い笑顔を称えながら云った―――。