第5章 真実
「中也兄様……痛いです」
「態とだ」
アッサリ云った中也にムッとした顔をする薄雪。
その顔を見てクツクツ笑う中也。
「……元気そうじゃねーか」
「!」
先程、会った紅葉同様。
中也も心配していたのだ。
その事を実感した薄雪は中也に抱き着いた。
「うぉっ!?何だよ、いきなり」
「黙って出ていったりして御免なさい」
「……。」
はぁ、と息を吐いて優しい手つきで撫で直す。
「………戻ってこねーのかよ」
「はい……」
即答する薄雪に、「まぁ、判っていたけどな」と呟く中也。
「青鯖と居るとろくなことねーぞ」
「先刻、紅葉姐様にも云われました」
「………姐さんも心配してただろ?」
「はい……」
薄雪が中也から離れる。
「だが、間違いなく薄雪を一番守ってるのは………」
ボソッと云った中也の声は、薄雪の耳にハッキリとは伝わらなかった。
「?」
首を傾げる薄雪。
「何でもねーよ」
ぽんっと頭を叩いた。
「そういや、お前。戦わねーの?彼奴等蹴散らすくらいワケねーだろうが」
「治兄様に禁止されています」
「ふーん………相変わらず過保護だな」
「え?」
「戦わねーなら全力で避けろ。得意分野だろ」
「誉めてますか?それ」
「誉めてるよ。手前の危機回避能力は並大抵のものじゃねーからな」
「………誉めてるように聴こえませんが、気を付けます」
ピピピピピ………ッ
中也の電話が鳴る。
「じゃーな。気を付けろよ」
「中也兄様も御自愛を」
フッと笑って中也はその場から去っていった。
薄雪は見えなくなるまでその姿を見届けると、
「警察に通報しなくては」
警察と消防に連絡したのであった。