第1章 最悪な1日
翌日―――
国木田は、社長に紹介された新人……
「国木田くーん。置いて行くなんて酷いよー」
「突然居なくなって勝手に買い物に行ったのは貴様だろうが!」
「だって凄い貴重な本なんだよ!?これ」
「知るか!」
太宰治に振り回されていた。
太宰を怒鳴りながら事務所に戻る2人。
そんな2人に続くように、もう1人。
事務所に入ってきた。
「おかえりー白沢さん」
「只今、戻りました」
そう事務員達に挨拶を済ませる薄雪。手には買い物袋を提げていた。
何かの買い出しに出ていたのだろう。
「買い出しか?」
「あ、はい。国木田さんも……」
薄雪はそう云うと、国木田の隣の人物に目をやる。
「ん?ああ、此れは今日から入った「愛らしい」――」
国木田が説明する前に太宰が素早く膝を折り、薄雪の手を取る。
「……え」
「可愛らしいお嬢さん。私と心中を――」
スパーン!!!
国木田の一撃が太宰の脳天に直撃した。
「あ……えっと。私の間違いで無ければ初めて見る方だと思うのですが……」
「今日からの新人だ。気にするな」
「はあ……そうですか……」
国木田は溜め息を着きながら薄雪に云った。
「ねぇねぇ国木田君」
「……なんだ」
「あの子、名前なんて云うの?此処じゃ随分若く見えるのだけど」
「仕事しろ」
「えーじゃあ良いよ。本人に聞きに行くから」
ブーブー云いながら急に立ち上がる太宰。
「白沢薄雪だ!云っておくが未成年だからな!?絶っ対に手を出すなよ!?」
其れに慌てたのか、追加の情報まで寄越す。
それから仕事しろ、真面目にやれ等々。
様々な攻防を繰り返し、国木田の1日は慌ただしく終わっていったのだった――。
夕刻――。
漸く悪魔のような新人から解放される時間が差し迫る。
「おい太宰。明日の出勤時間は………」
そう云いながら居る筈である太宰の席を見るも、見当たらない。
トイレか?
そんな風に思えたのは初日だったからであろう。
「国木田さん。太宰さんならとっくに帰宅しましたよ………白沢さんに続くようにして」
「なっ……!?」
事務員が告げた言葉は、国木田の頭に痛みを植え付けたのだった。