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【文スト】永久に枯れない花の色は

第4章 争いの幕開け


「ちゃんと用意してあったのか」

ふふっと笑う太宰にムッとした表情を作る薄雪。

「兄様が食べに来るって云ったんじゃありませんか」

「そうだね」

タイミングよく包帯を巻き終わると、救急箱を閉めて立ち上がろうとした。

「!?」

が、太宰に腕を引かれて出来なかった。

太宰の胸のなかに収まり、固まる薄雪。


「………治兄様……急に危ないです…」


漸く出せた言葉。
太宰が満足そうに笑っているのだけが分かった。
―――何故かは判らないが。


「連絡くらいすれば良かったね」

「……。知らないでしょう?私も知りませんでしたし」

「ん?薄雪の番号のこと?知らないわけないでしょ」

「………愚問でしたね」


知らないわけないのだ。
家主に気付かれずに部屋に侵入できる人なのだから。


「何れにせよ、誰かに拘束されていたのでしょう?仕方ありませんよ」

「本当にそう思ってる?」

「………。」


仕方無い―――
本当にそう思っているかと問われれば、全く思っていない。敵の拘束なんて只の飾り程度にしか思わない人なのだから。
連絡を1つ寄越すことなど何て事無いはずだ。



でも、太宰から連絡を寄越すなんて有り得ない。


だって


「治兄様は私を困らせるのが趣味でしょう?」

「うーん」

薄雪の指摘に態とらしく考える姿勢をとる太宰。


「半分正解」

「5割正解なら充分です」

ニッコリ笑って云った太宰の腕から抜け出し、今度こそ立ち上がった。


「出来たら起こして」

「兄様、仕事は?」

「明日抜け出してきたことにする」

「これこそ愚問でした」

はあー。
大きな溜め息を着いて薄雪は台所へと向かった。


国木田が怒り狂っている様を想像しているだろうが、決して仕事に行くようには云わない薄雪に笑みを溢す太宰。


如何云えば機嫌を損ねないか。
恐らく、会話1つするにも自分の事を考えて話しているのは太宰は判っているのだ。

判っているからこそ苛めたくなる―――


「外の世界に出たところで薄雪の運命は変わらないのにねぇ」


ごろん、と横になりながら太宰は愉しそうに呟いた。

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