第4章 争いの幕開け
買い物袋を提げて帰宅した薄雪。
「………。」
玄関に入って直ぐに違和感が襲う。
見知らぬ男物の靴。
薄雪は溜め息を1つ着いて、家に上がった。
スー……スー…
「矢っ張り……」
居間に転がっているのは、違和感の原因だった。
規則正しい寝息を立てて眠っている………様に見える。
買い物してきたものを簡単に片付けて、
違和感の原因―――こと、太宰に近寄る薄雪。
「!」
そして、近付いて初めて気が付いたのだ。
薄雪は部屋の片隅に置いていた箱を取りに行く。
「敦さんの予想が正解だったようですね」
ポツリと呟いて、箱の中から消毒液と脱脂綿を取り出した。
「治兄様。手当てしますから動かないで下さい」
「うん」
矢張り、狸寝入りだったか。
薄雪は2度目の溜め息を着いて、手当てを始めた。
「いてて。もう少し優しく出来ないの?」
「充分に優しいでしょう?滲みる事を云っているならば消毒液に文句を云って下さい」
「つれないねぇーもう少し愛想よく出来ないの?」
「私の笑顔が気色悪いと云った人が何云ってるんですか」
はぁ。
溜め息を着いて処置を終える。
「薄雪、序でに包帯も巻き直して」
「はい」
くるくるくる。
云われるがままに包帯を巻き直す薄雪。
「昨日の夕飯は?」
「え?」
ピタッと動きが止まる。
「夕飯の献立」
「焼魚です」
「私の分は?」
「今朝食べてしまいました」
「そう」
「……。」
何時見ても何を考えているのか判らない表情――。