第4章 争いの幕開け
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本日、仕事が休みの薄雪は近所のスーパーに来ていた。
「毎日食事を作るというのはむずかしいことなんですね」
つい最近までは
適当に料理の本を眺めて、
自分の作れそうなものを見繕って、
必要な材料とチラシを照合して。
深く考えずに行っていた「作業」だったのに。
ここのところ、食事を作ると云うことしか………具体的に云えば『夕食』のことしか考えていない自分がいることに薄雪は気付いた。
「……兄様は今日も食べに来るか判らないのに」
はぁ、と溜め息を着いた。
「薄雪さんってお兄様がいらっしゃるの?」
「!?」
突然、話し掛けられてハッと顔を上げる。
後ろに居たのは同じ事務員の春野だった。
「春野さん」
「でも薄雪さんって寮で独り暮らしをしてるんじゃなかったかしら?」
「あ、はい。身内は全員、他界してますので」
「あら?でも今、お兄様って」
「昔からお世話になっている、兄のようなヒトが居るんです」
薄雪はニコッと笑って云った。
その言葉に「まあ!」と驚き、ニヤッとする春野。
「薄雪さんの好い人ですか!?」
「好い人……ですか…」
少し考え込む薄雪。
「まあ…好い人なのは間違いないですけど」
「けど?」
「矢張り、どちらかと云えば兄妹に近いですね」
「あらあら~」
春野は微笑んでいる。
そんな春野に笑みを返して、買い物を始めた。
「そういえば薄雪さん。太宰さん見掛けませんでしたか?」
「いいえ」
トクッ
小さく心臓が跳ねる。
「朝から敦さんが太宰さんが行方不明と云われてたから」
「敦さん、昨日も太宰さんを探してましたから」
「そうなんですね」
レジを通し、袋に詰める。
「まあ太宰さんならきっと、その内ひょっこり帰ってきますよ」
「うふふ。そうですよねー」
笑いながら話して。
2人は各々の行く方向へ分かれた。