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【銀魂/土方夢】恋すてふ

第1章 しづ心なく(土方side)


どのくらいそうやって、酒を口にしていただろうか。
「こんな時間か。もう帰らなくちゃ」
彼女が時計に目をやった。
「そうか……」
……
……アレ、俺なんでがっかりしてるんだ?
こんな時間なんだから、帰るの当たり前だろ。
がっかりしている自分に気づき、急に恥ずかしくなる。何を期待していたというんだ、俺は。
「タクシー呼ぶぜ。おやっさん、タクシー一台呼んでくれ」
「そんな、まだ終電あるから大丈夫よ」
「いや、帰り道にあんたに何かあったら後味が悪い」
「でも……」
「気を遣うことはねえよ。ああ、もしなら公用車で部下に送らせるぜ?」
「そんなこと!」
まあ、そんなことしたら、原田あたりに頼んでも、明日には総悟の格好のネタになるだけだろうが。

「土方さん、本当に今夜はありがとう」
「いや、礼には及ばねえ」
「また一緒にごはん食べましょ」
「……」
「だめかな」
一瞬の不安そうな表情に、俺は正直心を奪われた。
「いや、だめじゃない……。また誘っていいか」
最後の方は、ほとんど声がかすれていた。
タクシーが走り出しても手を振っている彼女に手を振り返しながら、やっぱりタクシーに同乗するべきだったか、と激しく後悔した。
でも、初めてのデデデート?でそんなことをしたら、いかにも送りオオカミ狙ってるみたいじゃねえか。
気持ちを落ち着かせようと、煙草に火をつけようとしても、なかなかつかない。
クソ。
俺は火照った頭を冷やすために、冷たい風の吹く道を、1人歩いて帰った。
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