第1章 しづ心なく(銀時side)
パンケーキ食ったあとはどうしよう。
いや、もちろん、俺の願望としてはですよ、夜までお茶して、メシ食って、酒を飲みにいって、そのまま史緒ちゃんお持ち帰りしたい。
(万事屋にお持ち帰ったらもれなく神楽がいるから、お持ち帰り場所はペンディングだな……)
でも最初のデートでお持ち帰りって、やっぱまずいと思うの、ウン。
やっぱり女って段階を踏みたいものじゃない。
最初は「もう少し一緒にいたいな」くらいで帰しておく方がよかったりするんじゃね?
それでいて、女は「強引な男が好き」だったりするからさー、3回目あたりで「男が強引に誘ってくるから仕方なく」的な形でお持ち帰るのが一番成功率高いはず。
やっべーなー、銀さん乙女心わかっちゃってるなー、恋愛指南書出しちゃおっかなー。
あこがれの印税生活!
と、鼻血垂らしそうになりながら妄想を膨らませていたので、背後からいきなり、
「銀さん、お待たせ」
と史緒ちゃんに言われたときには、
「ファッ!」
と変な声が出た。
だが、俺が本当に驚いたのは、彼女の姿を目にしてからだった。
「驚かせちゃった?」
「……」
今まで俺は、史緒ちゃんがスーツ以外の服装をしているのを見たことがない。
それが今日は、薄いピンク色の着物で現れたのだから、俺がその姿を上から下までじっと眺めてしまったのも無理はないだろう。
「お、おかしいかな、この格好」
「いや、すげえ可愛い!」
俺は言った。
普段はスーツでビシッと決めて、デートでは女らしい服装で来るだなんて、何だよこの小悪魔。
マジこのギャップに勝てそうにないんですけど。
「ほんと?ありがと。仕事に着る服ばっかりで、こういうときに着る服あんまり持ってないから、着物にしちゃった」
「仕事の時も、着物にした方が、史緒ちゃん目当てのクライアント増えるんじゃね?」
「何言ってるの」
史緒ちゃんはそう言いながら顔を赤くした。
ああ、こういう顔初めて見たな。