第1章 しづ心なく(銀時side)
史緒ちゃんが来てからもしばらく待たされたけど、それはあまり苦に感じなかった。
男は、可愛い女と会って話してるだけで満足する生き物だ。
女も糖分も、甘いものほど身体には毒かもしれないが。
それを一緒に味わえるなんて、幸せすぎて怖エ。
俺は、メニューに目をやるふりして、ほとんど史緒ちゃんの横顔を見ていた。
普段は下ろしている髪だが、今日は着物だからか、サイドの髪をまとめて、銀細工の髪留めをつけていた。
高価なものではなさそうだが、なかなか手の込んだ細工がしてあり、使い込まれた渋い艶がある。
彼女にはよく似合っている。そう思った。
「銀さんは、やっぱりこの生クリームがたっぷりかかったやつでしょ?」
俺の視線には気づいていないようで、メニューを見ながら史緒ちゃんが言う。
「うん。このイチゴとかブルーベリーとかたくさん乗っててうまそうだよな。史緒ちゃんは何食べる?」
「私はこの、キャラメルがかかってるのにしようかな」
「ああ、これもうまそうだな」
「じゃあ、銀さん、半分こしよっか?」
顔をのぞきこむようにしてそんなことを言われたら、マジたまんねえ。
うん、完全にデデデデート、でいいんだよな、コレ。
運ばれてきたパンケーキをほおばりながら、目の前の史緒ちゃんを眺める。
うまいモンと可愛い女。
マジで幸せ。
何なのこの天国。
俺、近々死ぬかもしれない。
「おいしい。やっぱり銀さんに協力してもらって良かった」
「そうか?並んだ甲斐があったな」
「ほんとに、ありがとう」
いや、礼を言われるほどのことじゃない。
正直、俺がこうしてデデデデート?したかっただけなのだから。