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【銀魂/銀時夢】忍ぶれど

第1章 しづ心なく(銀時side)


俺はその名刺を見て目を丸くする。
「おいおい、弁護士先生かよ」
「まだ駆け出しだけど」
「いや、……えーと、姐さん、名前、史緒っていうの?史緒ちゃんみたいな美人の姐さんが弁護士先生なんて、カッコいいな」
一度、エセ弁護士になってマダオ……いや長谷川さんの弁護をしたことがあるってことは、言わないでおいた。
「ふふ、お世辞でもそんなふうに言ってくれると嬉しい」
彼女は照れたように笑った。
笑った顔を見ると、ますます弁護士先生だなんて思えない。
「俺の方は名刺切らしてて。悪いな」
本当は名刺なんか持ってないけど。
ちょっと弁護士先生相手に見栄張っちまった。
「かぶき町で万事屋やってる、坂田銀時だ。銀さんとか銀ちゃんとか呼ばれてる」
「ああ、お兄さんが、万事屋銀ちゃんかあ」
「え?俺のこと知ってるの?」
「うん、お噂はかねがね。かぶき町でこういう仕事してると、時々名前を耳に入ってくるよ。みんなに慕われている『銀さん』って、どんな人なんだろうと思ってたけど」
そう言って俺の顔をまじまじと見つめる。
「本当に銀色の髪の毛なんだね。綺麗」
綺麗?そんなこと言われたの初めてだな。
「それでこれが噂の、死んだ魚のような目かあ」
おいおい。
俺ってどういう噂されてるわけ?
「……いいんだよ、時々煌めくから」
「それはちょっと見たいかも!」
彼女はひとしきり腹を抱えて笑ったあと(さすがに失礼じゃね?)、時計を見て慌てたようだった。
「うわ!もう時間ないや。おやじさん、お勘定ここに置くね。銀さん、良かったら残り食べて。おやじさんの折角作ってくれた定食、残すの気が引ける」
「お、おお」
「じゃあね、銀さん、またね」
俺の返事が耳に入ったかどうか。
彼女はバッグを肩にして、嵐のように(何かいい匂いがした)去って行った。
俺は、彼女が残した唐揚げと白飯を遠慮無くいただくことにした。
もともと人の残りモンだってなんだって、腹に入れる時には入れる俺だ。
だけど、普通女って、会って2回目の男に、自分の残り物食わせようとなんてしないだろ。
そんなに俺、食いモンに困ってそうなのか?
そう思って俺は、ちょっとだけ落ち込んだ。
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