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【銀魂/銀時夢】忍ぶれど

第2章 恋ぞつもりて(銀時side)


史緒ちゃんは続けた。
「銀さんは、柳町に行ったことある?」
「いや、そんな粋な場所で遊ぶような縁はねえな。普段はかぶき町のあたりで飲むか打つか、そんな感じだな」
ほんとは、芸者を上げるだなんて金、持ったこともねえけど。
「辰巳芸者、って聞いたことある?」
「おお、羽織芸者とも言われた、深川の芸者のことだろ」
「そう。吉原とは違って男名前で登録されて、羽織に素足で芸を売っていた女たちのことよ」
義理人情に厚く、自分たちは色でなく芸を売っているのだという気概を持っていた深川の芸者たちは、江戸の男たちにとって一つのあこがれだったらしい。
なかなか落ちない深川の芸者が自分にだけ弱いところを見せる。
男を魅了するツンデレの常套手段だ。
「こういう言い方をすると変に聞こえるかもしれないけれど、建前上、身体を売るのは吉原の遊女にだけ許された権利だったのよ。幕府は黙殺していただけだけど。吉原以外でああいう顔見世はできないし、売春をしていることがわかったら、その女性は吉原に入れられる」
そしてそのまま、太陽を見ることなく一生を終えていた女たち。
吉原の火が夜王を焼き切るまで、ずっとそれは続いていた。
「深川にも芸ではなく色を売る女性たちはいたわ。でもそういう場所、いわゆる岡場所は大量検挙されて、多くの女性が吉原に連れて行かれたそうよ。で、芸を売るという気概をもった者は柳町に流れ着いた。それが、私のいた柳町。色ではなく芸を売る街よ」
そう俺の目をまっすぐ見ながら言った史緒ちゃんの瞳を見れば、彼女が芸者をやめてもなお、自分の育った街を誇りに思っていることは伝わってきた。
そう。
誇り高い辰巳芸者の末裔は、今こうして、俺の目の前にいる。
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