第2章 恋ぞつもりて(銀時side)
結局飲んで食事をして、当たり障りのない会話だけして、史緒ちゃんは帰って行った。
「またね」
そう言って手を振る史緒ちゃんが、少し寂しそうに微笑みを見せていたのは、俺がそう見たいという願望だったかもしれない。
離れてしまった途端、また会いたくなる。
恋しい気持ちが奔流のようにあふれて、心の中に深い淵を作る。
本音を言えば、もっとゆっくり話をしたかった。
それもできれば俺の腕の中で、あるいはピロートークで、といきたいところだったが。
色ではなく芸を売る街に育った誇り高い女。
それをホテルにでも誘えば、枕芸者と同じように、金さえ出せば誰にでも股を開く女だと誤解していると思われたくもなかった。
それに……、彼女が柳町の芸者だったと知ったときから、引っかかっていた肝心なことが聞けずじまいだったのもある。
器の小さい男だな。
俺は自嘲気味につぶやいた。