第2章 恋ぞつもりて（銀時side）

「でもなあ。銀さん、史緒ちゃん……じゃなかった、その、鞠千代姐さんの踊りの一つも見てもてなされてみたかったぜ」
「……」
「でも、酌はしてもらってるもんな。実は銀さん、すげえ贅沢させてもらってんだ」
俺の言葉に史緒ちゃんは苦笑した。
「そんな大した芸者じゃなかったわよ。踊りは好きだったけど、まだまだ青くて色気よりなんとやらだったしね」
「でも、そっから弁護士先生にだなんて、華麗なる転身だな」
そうそう。
すまいるで働いているお妙なんか……道場復興のために金を稼ぐとかなんとか言ってるけど、当初の目的忘れてるんじゃねえかって時々思うよな。
水商売しながら金を貯めるのは、そう生やさしいことではないだろう。
「試験のための勉強している間は、華麗も何も、キノコが生えそうなくらいの引きこもりだったわよ」
「まあ、誰でもさなぎの時代はあるさ」
「銀さんも？」
そう聞かれ、俺は返事に困る。
「うーん。俺の場合は、今がさなぎだから」
「ええっ、そうなの？」
ああ。やっと笑った。
やっぱり目の前の女には、笑っていてもらわねえとな。