第2章 恋ぞつもりて(銀時side)
そんなことを考えたとき、史緒ちゃんがおずおず言った。
「あのう、……銀さんってさ、いつもその格好してるよね?」
まあな。服を色々替えたら少年誌の主人公はつとまらねえからな。
「ああ。同じの4着で回してる」
「そ、そうなんだ」
「でも、史緒ちゃんがお望みならどんな服でも準備できるよ。こう見えても衣装持ちでコスプレ王って異名があるくらいだから」
「そっか、万事屋だもんね。ふふ」
そうそう。陰陽師にでも銀さん太にでもホストのGINにでもなんでもなってあげるよ。
俺はもう一歩、彼女との距離を詰めたくて宇治銀時丼を見つめながらこう言った。
「なあ、終わったら、この前行けなかった分、メシでも食いに行こうぜ」
顔を見る勇気はなかった。
だが、史緒ちゃんはすぐに、
「そうね。そうしましょ」
と言ってくれた。
思わず顔を上げる。
前向きな返事。
これはひょっとするとひょっとするんじゃね?
でもそのためには、この寒い懐を何とかしねえと。
と、思った俺に、史緒ちゃんはさらにこう告げた。
「あともう一つお願いがあるんだけど」
「ん?」
「銀さん、万事屋で浮気調査ってやってる?」
「おお、得意分野だな」
「そっか。あのね、妻が浮気している可能性があるから離婚したいっていうクライアントがいるんだけど、証拠が何もないのよ。テレビドラマの見過ぎなのか何なのか、弁護士が調べてくれるって誤解してるみたい」
「……」
「万事屋銀ちゃんを紹介していいかな?」
仕事の依頼か!
目の前の史緒ちゃんが、マジで女神に見えてきた。
「おお。早速この後にでも来てくれていいから」
「すごい仕事熱心なのね」
う。
そんな風に言われると、ちょっと良心が痛むな。
「でも、明後日の夕方以降の約束は忘れないでね」
「もちろん」
俺が懐具合を気にしてるのも、結局は史緒ちゃんと一緒にいたいためだからな。
単純だな、ほんとに俺は。