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【YOI】モンスター・ハンターズ【男主&ユーリ】

第1章 青い瞳のサムライ


今シーズンはSPとFS両方共彼の振付になり、俄然やる気を刺激された礼之は、かねてより滑りたいと思っていた楽曲を提案したが、コーチは勿論現役時代からの顔見知りである純からも「僕は否定せぇへんけど…」と、難色を示された。
彼らが反対する理由は、礼之も理屈では判っていた。
何故なら礼之の希望しているプログラムは、礼之自身のルーツや特にフィギュア大国で『彼』のいるロシアにとって、お世辞にも歓迎される事のないものだからである。
礼之は、今シーズンGPSに2試合招待されていたが、試合の1つがロシア大会にアサインされた場合を、コーチと振付師の2人は特に懸念していたのだ。
だけど、礼之は歴史的背景その他よりも、幼い頃から自分が大好きなこの曲を、スケートで踊りたいと切望していた。

「このプログラムに複雑な事情やメッセージなんて、考えていません。そんなんじゃないっていうのを、僕のスケートで証明してみせます。何よりも僕が今、滑りたいんです。やらずじまいで後悔するよりはずっと良いです」

普段から競技の先輩や目上の人間に対して礼儀正しく真面目な礼之だが、一度こうと決めたら余程の事がない限り譲らないという頑固な一面を持っている。
かといって、頭から押さえつけるような真似は良くない事を、コーチも振付師も長年の経験から熟知していたので、幾つかの条件付きで許可を出す事にしたのである。
その内の1つがSPの「剣の舞」であり、ジュニア時代より安定した4回転ジャンプが上手く決まり、地元ロシアの現王者で優勝候補筆頭である『彼』のミスに助けられたのもあって、SP終了時点で礼之は僅差とはいえトップに躍り出た。
そして迎えたFSでは、自身初披露となる「フィンランディア」を、リンクで堂々と滑り切った。
『スポーツマンシップに則り、正々堂々…と行きたいトコやけど、君もこのプロをロシアでやるからには、腹くくっとき』
『まだまだシーズンは続きます。たとえ今回どのような結果になったとしても、決めたからには前を向いて、進む事を止めてはいけませんよ』
彼らに言われるまでもなく、ある程度の覚悟はしていたつもりだったが、転倒など大きなミスもなく終えられたと思っていた礼之に突きつけられたのは、厳しいロシアからの洗礼だった。
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