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【YOI】モンスター・ハンターズ【男主&ユーリ】

第1章 青い瞳のサムライ


表示された得点に、礼之の顔が僅かに強張る。
それから数秒後、会場の至る所からどよめきが起こった。

シニアに上がってから初めてのGPSとなるロシア大会で、礼之は漸く『彼』と対等の舞台に立てた覚悟と喜びを、ひしひしと感じていた。
かつてジュニア時代のGPFで、『彼』ばかりに意識を向けて自分の事が疎かになった挙げ句見るも無残に完敗して以来、ひたすら自分の目指す演技に向かって修練を重ねていた。
当時は、最高のシニアデビューを飾った『彼』の後を追わんと、参戦可能な年齢になり次第自分もまたシニアに上がるつもりでいたが、その年の全日本選手権での経験から、もう1年待つ事にしたのだ。

「他人の事を気にする前に、まずは自分の事をしっかりやる」と思い直した礼之は、ジュニア最後となる翌シーズンでは、『彼』が当時打ち立てた記録を全て塗り替えるという目標を立てた。
これくらい出来なければ、これから先『彼』をはじめシニアの強豪選手達に挑む資格すらないと考えていたからだ。
そんな思いを胸に秘め、見事それを達成した礼之は、最早競技デビューからのあだ名である『青い瞳のサムライボーイ』ではなかった。
己のスケートを究めんとストイックなまでに競技に打ち込む姿から、いつしかファンや周囲からはこう呼ばれるようになったのである。
──『青い瞳のサムライ』と。

シニア参戦を機に、礼之はそれまで世話になっていた外国人コーチから、『名伯楽』の呼び名も高いベテラン日本人コーチに変更していた。
母親譲りの容姿に加えて、成長期を迎えた今ではその血が更に色濃く出てきたが、元々礼之の内面は典型的な日本人気質なので、意思疎通や相性などは日本人の方が合っていたからである。
そんな礼之の今季のSPはハチャトゥリアンの「剣の舞」で、正統派スタイルの丁寧かつスピーディな演技は、シーズン開始前のアイスショーなどでも好評を得ていた。
礼之の振付を担当したのは、クラシックや和プロに定評のある藤枝純という20代の若手振付師で、2年前の全日本選手権で彼の現役最後の演技を目にしてから、引退後振付師に転向した彼に絶対に自分のプログラムを作って貰いたいと何度も懇願した結果、相手が苦笑交じりに折れてくれたという次第である。
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