第10章 【最終章】約束
街を見渡せる小高い丘の上。
ビアンカはそこに眠っていた。
ビアンカが太陽を目にしたあの日。
リヴァイの腕の中、永い眠りについた最期の日。
地下街の土の中に彼女を埋葬することは、リヴァイにはできなかった。
陽の届かない暗い世界で一生を終えたビアンカを、更にまた深い地中へ弔うのは辛すぎたのだ。
太陽が覗くその場所で火葬し、立ち上る煙を最後まで見届けた。
本当なら生きているうちに地上へ連れて行ってやりたかったが、それは叶わなかった。
ならば、せめてそこから天へ昇れるように。
ずっとそばに置いていた遺骨は、リヴァイが地上へ来た時に一緒に連れてきた。
その時に改めて建てた墓が、今、目の前にある。
「ビアンカ…。今日も太陽が眩しいな…」
リヴァイは立ち尽くしたまま、ポツリ呟いた。
今日はビアンカの命日。
未だに記憶の中のビアンカは、リヴァイの脳裏に鮮明に映る。
まるで春のような女だった。
温かく、寄り添うと心地いい、リヴァイが初めて愛した女。
包み込むような愛情をくれた女。
「あれからだいぶ経ったな。もう、俺の方が年上になっちまった…」
今でも思い出さない日はない。
ビアンカと共に生きた、八年という歳月。
これから先も、一生霞むことはないだろう。