第10章 【最終章】約束
「ねえねえ、エルヴィン!リヴァイがシルバーのリング身に付けてるの、知ってた?」
興奮気味に団長室を訪れたハンジは、何の脈絡もなく先程見た事実をエルヴィンに尋ねた。
「ああ…、首から下げたやつか?」
「それそれ!知ってたの?教えてよー!あれペアリングかな?どう思う?リヴァイってばあんな顔して恋人いるのかなぁ!?」
ハンジは身を乗り出してエルヴィンに詰め寄った。
好奇心で輝くレンズ越しの瞳を目の前に、少しだけ苦笑いする。
「恐らく、だが」
小さく前置きし、エルヴィンは握っていたペンを置いた。
「そういった浮かれたものではない気がする」
「え?」
「誰かの形見、なのかもしれない」
「……」
「聞いた訳じゃないからわからないが。白い花を持ってどこかに行く姿を、何度か見かけたことがある」
「………そう…、か…」
エルヴィンは窓の外に視線を送った。
見つめる先を同じように目で追うハンジは、声を落とす。
「デリカシーのないこと聞いちゃったかな…」
「お前のデリカシーのなさには慣れてるだろ。リヴァイは」
今更だ、と鼻で笑うエルヴィン。
窓の向こうには、噂の人物―――兵団の門を出て行こうとするリヴァイの姿が見えた。
手にしているのは、白い花束。