第10章 【最終章】約束
「開門、三十秒前!」
トロスト区最端の門前には、出立前の調査兵団が整列していた。
街中に開門の鐘の音が響き渡る。
民衆の激励、冷やかしの声が立ち込める中、リヴァイの後ろには固唾を飲む兵士たち。
目前には大きな背中に自由の翼を背負ったエルヴィン。
隣には緊張感とは無縁のハンジ。
「暑いねー。夏も近いから当然かぁ。って、リヴァイってば何でそんな涼しい顔していられるのさ?」
「うるせぇ。開門するぞ」
大きな音と共に、トロスト区の門が開かれた。
人類の希望を背中に―――。
自分の信念と、ビアンカとの約束を胸に―――。
リヴァイはそっと胸元に手を当てた。
ビアンカは、今もここにいる。
「第五十三回、壁外調査を開始する!前進せよ!」
地響きと共に、調査兵団が壁の外へ馬を走らせてゆく。
鳥が一斉に羽ばたいた先には、視界いっぱいの青と、大きな光が待ち構えていた。
リヴァイは目を細めて空を仰いだ。
ビアンカ、見ているか?
今日も太陽は
あんなにも眩しい――――。
【完結】