第10章 【最終章】約束
リヴァイはその場にしゃがみ込むと、手にしていた花束を墓前に供えた。
それはあの日の野花のように、白い花。
頬を温かな風が撫でた。
茂る緑の中を跳ねていた小鳥が、街を目掛けて飛んで行く。
『リヴァイ……』
自分の名を呼ぶビアンカの声が好きだった。
『悲しまないで。リヴァイの笑顔が好きだって言ったでしょう?』
時々無茶を言う所も。
『二人でいられることが、私の幸せ』
そんな風に愛してくれた所も。
『愛してる……』
声にならなかった最期の言葉は、ずっと胸に残っている。
リヴァイは真っ直ぐ墓前に目を向けた。
「ビアンカ、約束する。
地下とか地上とか、壁の中とか外だとか。そんなもの、俺が全部取っ払ってやる。巨人に脅かされずに誰もが当然のように太陽の下で暮らせる世界を、俺が、必ず……」
いつでもリヴァイを見守ってくれていたビアンカ。
待っていてくれる。
それを成し遂げる日を。
そして約束を果たすことができたならば、きっとまた笑ってくれるはず。
リヴァイはそう信じていた。