第10章 【最終章】約束
汚れた上着とシャツを脱ぎウエストのベルトに手を掛けたところで、冷ややかな三白眼がハンジを睨んだ。
「変態も程々にしろ」
リヴァイが衣服を脱ぎ始めても尚、その場に居座るハンジ。
この同僚が変態だということは重々承知しているが、見世物ではないのだ。
「いや…」
ハンジの視線は、ある一点―――リヴァイの胸元に向けられていた。
「リヴァイでもアクセサリー付けるんだなーって思ってさ」
首からぶら下がる、シルバーの指輪。
リヴァイが装飾品を身に付けている所など、初めて見た。
服の下に忍ばせているということは、見せるためのお洒落ではないということ。
そして身に付けてまで壁外調査に赴くということは、それだけ大切なものだということ。
瞬時にそこまで考察したハンジは、目を輝かせてリヴァイへ詰め寄った。
「何、何!?それってもしかして、ペアリングとか!?」
「うるせぇ。出てけ変態」
「え!?わわっ、待って!詳しく聞かせて!」
ハンジの首根っこを掴み、脱衣所の出入口まで引きずって行くリヴァイ。
その体を勢いよく廊下へ放り投げ、乱暴に扉を閉めてしまう。
ぎゃあぎゃあと喚く声がまだ聞こえてくる。
胸元に下げられた指輪を手に取り、ジッと見つめる。
長い年月のせいで、輝きは昔より更に鈍くなってしまった。
あの頃が、遠くなっていく―――。