第10章 【最終章】約束
兵団本部へと戻った一行は、幹部が集まり死傷者の数や被害状況を報告。
重苦しい雰囲気の中事務的に進められたその場は、小一時間程で解散された。
あとは各々の仕事に取り掛かるだけだが、これには長い時間を要す。
リヴァイは一旦自室に戻り衣服とタオルを手に取ると、すぐに浴室へと向かった。
「やあ、兵士長殿!」
「ああ」
「最後の討伐は見事だったね」
「何か用か?」
「あ、わかった?あの奇行種さ、何か変わった所なかったかなぁ?」
「変わってるから"奇行種"っつーんだろ」
リヴァイの後を追いながら苦笑いしたハンジは、更に続ける。
「まあ、そうなんだけど。接触したのはリヴァイとあの若い子たちだけでしょ?あの子たちは奇行種を前にそんな冷静な観察眼持ってるとは思えないからさ。それでリヴァイに聞いてるんだけど」
「別に。今までの奇行種と比べて特に変わった所はなかったが」
「本当?」
「ああ」
「本当に?」
「ああ…」
「本当に本当に本当!?」
「チッ、しつけぇな…。奇行種一体倒すよりお前の相手の方が骨が折れる」
「酷いなあ!」
「大体ここが何処だかわかってんのか?」
「え?」
ようやくハンジと顔を見合わせたリヴァイが、ため息混じりに問う。
周りを見れば、裸の男性兵士たちが数人、居心地悪そうに彼女を気にしていた。
「あー…、ごめんね?ちょっと話に夢中で……」
ここは風呂場へと続く脱衣所。
しかも、男性用の。
ハンジはそれに気づき、取りあえずは周囲にひと言詫びる。
「んじゃ、もし何か思い出したら教えてよ!絶対だよ!」
「ああ、わかった」
返事すら面倒だが、ここから追い出すためには適当な相槌であしらうのが賢明だ。