第10章 【最終章】約束
地響きと共に巨人の体が地面に打ち付けられた。
蒸気を上げていく塊から飛び降りて現れたのは、兵団の中でも一際小柄な人物。
けれども命を助けられた兵士にとって、その人物の背中はとてつもなく大きく映った。
「……リヴァイ、兵長……」
巨人の手から逃れた兵士は、へたり込んだまま呆然とリヴァイを見上げた。
消えゆく巨人の体と手に滴る血液を忌々しそうに一瞥したリヴァイが、男に向かって声をかける。
「無事か?」
「はっ、はい…!」
「壁に到達するまでは気を抜くな」
「あ…っ、ありがとうございます!!」
上擦った声で礼を言い頭を下げる兵士だが、それには目もくれず、リヴァイはさっさと自分の馬へと跨がった。
ふと空を見上げる。
清々しいほどの晴天。
肌に触れる外気は暖かく、風は爽やかに通り抜ける。
太陽が目に眩しく、リヴァイは眉をひそめた。
「リヴァイ。どうした?気になることでもあるのか?」
「いや……」
合流したエルヴィンに怪訝な顔をされ、リヴァイは小さく返す。
揃って進行方向を見据えると、今度こそ帰還するべく、立ちはだかる壁へと向かって馬を走らせた。