第1章 地下街の三人
「家事をするのに邪魔でしょ?目も悪くなりそうだし」
「……そうかも」
「決まり!じゃあ外出よっか?せっかく掃除した後なのに、また汚れちゃう」
揃って外へ出ると、ビアンカはリヴァイを椅子に座らせた。
櫛で髪を梳かし手にハサミを持つ。
「どんな感じにする?」
「短ければどんな風でも」
「わかった」
ザクザクとハサミを入れる音がする。
少しずつ頭が軽くなり、地面に自分の黒い髪の毛が落ちていく。
リヴァイは目の前を横切る通行人たちにぼんやりと視線を移した。
ただジッとしているだけでは退屈になり、道行く人の数を心の中で数えて時間を潰す。
程々に時間は過ぎた。
途切れ途切れ行き交う人間に、今何人まで数えただろう?などと考えていると、ビアンカがヒョイッと顔を覗き込んできた。
「うん、いい感じ。リヴァイっていい顔してたのねぇ!待ってて。鏡持ってくるから」
一人部屋の中に入って行ったビアンカは手鏡を持ち、すぐに戻ってくる。
「どう?」
リヴァイはそれを受け取り、鏡に映る自分を見る。
正面、右、左、と首を動かして髪型を確認したあと、そのままビアンカを見上げた。
「スッキリした。ありがと」
前髪もサイドの髪も耳の上あたりで切り揃えられ、後ろ髪は刈り上げられている。
遠目では性別が分かりづらかった容姿も、今はどこからどう見たって男だ。
「どういたしまして。ケニー、なんて言うかな?」
「俺だって気づくかな…」
「さすがに気づくでしょ!」
ハハッとおかしそうに笑うビアンカに、リヴァイも微かに顔を綻ばせた。