第1章 地下街の三人
「あ!?リヴァイか?男前になったじゃねぇか!」
夕方、部屋に戻ってきたケニーの第一声はそれだった。
グルリとリヴァイの頭を見回し、今度はグリグリその頭を撫でている。
「……っ、やめろよ…」
犬にでもそうするように撫で回すケニーに、リヴァイは迷惑顔だ。
そんな二人を眺めながら、ビアンカは思う。
やっぱり少し似ているような……?
だがそっくりではない。
もしかしたらリヴァイはケニーではなく、母親似なのかもしれない。
リヴァイの母親。ケニーの………。
ビアンカは大きく息を吐いて、その先を考えるのを止めた。
「じゃあ、私帰るね」
「あ?もう帰んのか?」
「もう日が届かなくなるし、明日は仕事だから。またね、リヴァイ」
「さよなら…」
手を振るリヴァイに、ビアンカもヒラヒラと同じように返す。
ケニーはまだリヴァイの髪に手をやっている。
その姿に少しだけ胸のモヤモヤを残しつつ、ビアンカは部屋の扉を閉めた。
嫉妬―――なのだろうか。
リヴァイに対して。
それから、見ず知らずのリヴァイの母親に対して。
知る限り、この地下街で自分以上にケニーが親しくしている人間は他にいなかった。
それが今は、リヴァイとの生活が中心になっている。
大切なのだろう。
血を分けた息子なら当然のことだ。
「子ども相手に何を…」
自分自身に呆れる。
そして、こんな感情をあの男に見透かされていないようにと願う。
間もなく暗闇に変わる地下街の往来。
ビアンカは家へと帰る足を速めた。