第9章 野花咲く太陽の下
「あんなに痩せ細った男の子が、今では私の夢を叶えてくれて……愛してくれて……。
ありがとう……リヴァイ……。私、幸せよ……」
死の恐怖に泣いた一年前が嘘のように、今は心安らかでいられる。
それはリヴァイの腕の温もりに包まれているから。
夢が叶った幸福感で満たされているから。
「ビアンカ…」
「眩しい…今のリヴァイも、この指輪も、太陽も…」
薄っすら瞼を持ち上げもう一度太陽を見上げると、その眩しさにまた瞳を閉じる。
初めて見る太陽に興奮したからだろうか…。
少し、疲れた。
とても眠い。
「ビアンカ…?」
リヴァイが慌ててビアンカの肩を揺らす。
呻くような声が小さく聞こえた。
「ビアンカ…、ビアンカっ!」
ビアンカの意識が遠くなっていくのがわかる。
リヴァイはビアンカの頬を手の平で包み込んだ。
「……っ、ありがとう…、ビアンカ。
ずっと、俺のそばにいてくれて……」
リヴァイの瞳からこぼれた光が、ビアンカの頬へと落ちていく。
「愛してる…っ…」
ビアンカは瞼を閉ざしたまま。
唇だけが微かに動き、ほとんど吐息だけでビアンカは囁く。
それは、リヴァイの耳にも辛うじて届いた。
声にならなかった言葉。
「私も、愛してる」――――。
二人の想いは、最期の時まで同じだった。
闇に閉ざされた地下街で生きた、ただの女。
太陽を知らなかったビアンカ。
そんなビアンカは愛する男に抱かれながら、永遠の眠りについた。