第9章 野花咲く太陽の下
屈んでビアンカの様子を見ていたリヴァイは、その場に腰を下ろした。
ビアンカの肩を抱き、自分の体へともたれさせる。
「凄い……。あんなに眩しくて、大きいなんて……。それに、空って本当に青いんだ……」
「ああ……、青いな……」
幼い頃、絵本の挿し絵で見たとおり。
空は水彩画のように青く澄んでいる。
ビアンカは太陽を眺めてはその眩しさに目を逸らし、野花や辺りを飛び回る小鳥を愛でていた。
リヴァイは上着のポケットから小さな箱を取り出す。
蓋を開けば、そこには輝く白銀。
ビアンカの手を取り、細い指にゆっくりと嵌めていく。
「リヴァイ……」
「約束だ。誕生日プレゼント」
何の装飾もない、シンプルなシルバーの指輪。
リヴァイの胸に揺れているものと、同じデザイン。
ひとつ違うのは、リヴァイの持つものが使い込まれた鈍い光なのに対し、ビアンカの指で輝くのは真新しい白い光だということ。
顔の前に掲げてみると、太陽が反射して尚のこと煌めいて見えた。
「凄く素敵…」
「ビアンカ、誕生日おめでとう」
「ありがとう…」
ビアンカの誕生日には、あと一日足りない。
しかし、ビアンカもリヴァイもそれを口にはしなかった。
ビアンカは静かに瞳を閉じた。
リヴァイの肩に頭を預け、思い出を語るように静かに話し始める。
「リヴァイ…、あの頃の約束、守ってくれたのね…」
「何のことだ?」
「ふふっ、忘れちゃったの?」
小さく笑い、肩で息をする。
「『俺がビアンカの夢を叶えるから』って。『必ず連れて行く』って…。そう言ってくれたでしょう?」
「……」
リヴァイには心当たりがなかった。
熱で朦朧としているのか…?
それにしては、何とも穏やかな顔だ。