第9章 野花咲く太陽の下
リヴァイがプレゼントを約束した、ビアンカの誕生日。
その日を二日後に控えた夜だった。
ここ数日発熱を繰り返していたビアンカは体力を消耗し、食事も口にできなくなっていた。
解熱剤を打ったあと静かに眠るビアンカを見届け、医師が小声で告げる。
「正直、あと数日もつかどうか…。こうして解熱剤を注射してやることくらいしか、もう…」
リヴァイの表情は強張る。
考えたくなかった。
けれども日を追うごとに衰弱していくビアンカを見ているうちに、それを覚悟しなければならないこともわかっていた。
眠ることも食べることも忘れてしまったかのように、献身的に寄り添うリヴァイ。
困憊したリヴァイと眠りについたビアンカを心配しながらも、程なくして医師は帰って行った。
部屋にはまた二人きり。
静寂が走る。
ビアンカの夢―――。
頭を過っては首を振る。
考えるな。
今はそれどころじゃない。
穏やかな呼吸を繰り返すビアンカ。
その寝顔を見ながら不安に駆られる。
いつまでこうしてビアンカのそばにいられるのだろう。
明日容態が急変したら?
いや、朝までに何かあったら…?
「クソッ…!」
何もできない自分が悔しくて情けない。
ビアンカをそばで見守ることくらいしか……。
起こさないようにそっと、ビアンカの手を握る。
逝くな…
頼むから、ここにいてくれ…
心でそう懇願する。
その時。
まるでその声が届いたかのように、ビアンカが薄っすらと目を開いた。
「私、寝ちゃってたんだ…」
「ああ。解熱剤に鎮静効果もあるって、先生が。水飲むか?」
「うん」
リヴァイは水さしに入った水をコップへと移す。
ビアンカの体を起こし支えると、それをゆっくり手渡した。